(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「砂利」ダンダンブエノ双六公演

ダンダンブエノは、東京サンシャインボーイズへの出演が多かった近藤芳正が2001年にスタートさせた劇団。公演のたびに気になってはいたのだが、今回が初見で、本谷有希子脚本、倉持裕演出、というふたりの名があったことに、強力に背中を押されて。
北国のおそらくは旧家、ひとりの男(板東三津五郎)が夜中に、庭で砂利を放っている。妊娠中の妻(田中美里)が止めるように言うが、男はなおも放り続ける。彼をそうさせるのは、ある不安だった。子どもの頃、苛めた相手が復讐にやってくるという不安が、妄想になって彼を悩ませていたのだ。やがて、妻の姉という人物(片桐はいり)が訪ねて来て、彼女こそがその不安の元凶だということがわかるのだが。
父親が亡くなったことが引き金になって、虚ろな心を抱え、日々不安にかられるこの男を中心に、過去の放蕩を引き摺る弟(近藤芳正)、おせっかいで覗き屋の居候(山西惇)、痛みを感じない男(酒井敏也)といった奇妙な性癖の持ち主がずらり。例によって本谷有希子は、作りこみに作りこみを重ねたような世界を出現させている。
実は、わたしには本谷の構築する世界を受け入れることができるかどうかが、いつも紙一重なのだが、正直今回はだめだった。男が妻の姉と肉体関係を持ってしまうという途中の展開が、ご都合なものに思えたし、少しでも共感を抱ける登場人物がひとりもいないことが、やはりキツイ。
というわけで、主人公の歪な成長を、いささか白けた目で眺めるという辛い観劇だった。造形のしっかりした板東三津五郎の主人公像や、登場した途端にその場の緊張感を一気に高める片桐はいりの存在感など、楽しめる要素がいくつかあったのがせめてもの救いか。そのあたりは、演出の倉持裕の力に負っているという気もするが。(130分)※東京公演は31日まで。

■データ
やや夜の空模様が心配なソワレ/表参道スパイラルホール
7・21〜7・31(スパイラルホール、ほかに亀戸あり)
作/本谷有希子 演出/倉持裕
出演/坂東三津五郎田中美里片桐はいり酒井敏也、山西惇、近藤芳正