(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「きのこに花を」インパラプレパラート 7th contact

舌を噛みそなネーミングのインパラプレパラート(自称、プラスチックのおもちゃ箱、だそうな)は、舞台芸術学院卒業生を中心に結成され、2003年5月に旗揚げ。去年秋の「グッド・メディシン・テイスツ・ベター・メディシン」を、気にしながら見逃したわたしは、今回が初見。
義母に馴染めず、前の学校では苛められた経験もある小学生の少女きのこ。家出をしたものの、親友の励ましで帰宅する。しかし、その途中で見知らぬおじさんから受け取った鉢植えは、不思議なチューリップだった。チューリップ曰く、進化の方向を模索中だとかで、神様から貰った猶予期間限定で、鉢を持った人間の体を使い喋ったり、遊んだりすることができるらしい。孤独なきのこは、たちまちのうちにチューリップと親友になり、明るさを取り戻すが、やがて神の猶予期間が尽きる日がやってくる。
いかにもメルヘンという設定に、冒頭からやや腰がひけてしまう。行きつく先は、どうせ少女のトラウマの克服だろう、という想像が先にたってしまうからだが、事実こどものファンタジー系のお話で、そんな予想は当たってしまうのだけれども、次第に甘さに流されない独特の世界があるように思えくるのには、感心させられた。
謎めいた冒頭のシーンも終盤すんなりと得心がいくし、個々の役者たちの個性も、陽性でファンタスティックな独特の空気を生んでいるようで、好感度が高い。中でも、チューリップに憑依(?)された主人公の親友役の内山ちひろが、動と静のキャラクターの対比をうまく演じて印象的。ほかにも、白井良など、いい味を出していた役者が数人いた。次を観てみたい若手劇団だ。(105分)※8日まで。

■データ
初日ソワレ/王子小劇場
7・4〜7・8
作・演出/大矢場智之
出演/内山ちひろ、大矢場智之、小泉隼人、中村掌子、堀川裕介、増田瑞穂、伊藤一将(メタリック農家)、大野泰山(チャリカルキ)、白井良、高塩誠(ハナウタカプセル)、間宮知子、三浦梢、宮嶋みほい(劇団バームクーヘン→Mrs. Fictions)
舞台監督/金森勝 照明/平石祥子 増田瑞穂 音響/山口心 宣伝美術/堀川裕介 制作/中村掌子