(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「冬の入口」弘前劇場公演2007

長谷川孝治らにより78年に結成。以来、青森を拠点に活動している地方劇団で、東京公演も数多くこなし、評価が高い。「俺の屍を越えていけ」の畑澤聖悟が籍を置いていたことでも知られる。(畑澤は2005年独立して渡辺源四郎商店を旗揚げ)
地方都市の焼き場の控え室。往生した老人の家族や親戚縁者が、火葬を待っている。老人はその都市の名士で、長男は家業を継いで出版社を経営、次男は飲食業を営んでいる。仕出しも届き、点火式の準備も整っているところに、お経をあげる僧侶が交通事故を起こしたという知らせが飛び込んでくる。動揺する家族たち。しかし、僧侶は幸いにも軽傷で済んだので、遅れてやってくるという。そこに、故人の隠し子が弔問に訪れて。
2000年初演の作品の再演。いやー、味のある芝居を堪能させてもらいました。故人をめぐる人々の人間模様と、彼らの心の襞を詳らかにするシャープな会話劇。しかも、ふたつの会話が別々に同時進行するという悩ましい展開まで、それも何箇所あった。現代口語演劇の血筋を感じさせる所以である。
登場人物のひとりひとりに味があり、そのやりとりが縦糸と横糸になって織り上げられていくような手ごたえがある。そこに浮かび上がる人間味ある絵柄は、暖かく、心地よく、そして誰にも心当たりがあるものだろう。役者の個性と力量にもはかり知れないものがあって、素晴らしい。初日ということもあったのだろうが、客の出足がいまひとつで、シアターグリーンの客席ががらがらだったのがなんとも残念だ。(120分)

■データ
初日ソワレ/池袋シアターグリーンBIG TREE THEATER
6・22〜6・24(東京公演)
作・演出/長谷川孝治
出演/福士賢治、鈴木徳人、永井浩仁、山田百次、茺野有希、石橋はな、斉藤蘭、青海衣央里、平塚麻似子、工藤早希子、林久志、鳴海まりか、平間宏忠、鈴木眞、高橋淳、長谷川等
舞台監督/野村眞仁 照明/中村昭一郎 音響/田中昇 美術プラン/青木淳 宣伝美術/デザイン工房エスパス