(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ムラムラギッチョンチョン」タテヨコ企画第14回公演

タテヨコ企画は、すけこまシアター、東京タンバリンと役者としてのキャリアを積んできた舘智子が、作・演出の横田修と組んで、1999年にスタートさせた劇団。ネーミングの由来は……、言わずもがなですな。個人的に、舘智子は4月の乞局「媚励」への客演が、まだ強烈に焼きついている。今回の演目は、2001年の第四回公演「宇宙ノ正体」をシリーズ化した第三作で、修行に打ち込む若き僧侶の卵たちが直面する苦難の日々を描く。
寺から姿を消した仲間の修行僧の居場所をつきとめ、彼を連れ戻しにきた一行。仲間の僧が寝泊りしているという美女姉妹の家で旅装をとき、本人を待ち受ける彼らの前に、次々珍妙な人物たちが登場する。ヤクザ、役人、そしてムジナと綽名される浮浪者などなど。どうも、その家では奇妙なことが進行中で、夫を捜して訪ねてきた役人の妻が、包丁を振り回して立ち回りを演じる。しかし、真に恐ろしい出来事が、彼ら全員を待ち受けていたのだった。
「宇宙ノ正体」シリーズばかりか、タテヨコ企画初体験のわたしは、物語の行方が一向に定まらない前半を特に楽しんだ。いわくありげな姉妹、山に出かけて一向に帰ってこない行方不明の修行僧、そして得体のしれないムジナの謎の行動などなど、先が読めない要素がいくつも絡み、展開も意表をついてくる。
しかし物語は、修行僧兄弟の親探しの話が浮上したり、姉妹の姉の方が抱える心の傷がとんでもない事態を巻き起こしたりして、やがて収束へと向かっていく。観終えてみれば、修行僧たちの青春群像として観ることがブレの少ない捉え方であることに気づかされる。
しかし、それにしてもムジナの存在感が奇天烈で、物語全体を不思議なテイストで包んでいる。作中を自在に行き交うこのキャラクターが有ると無しとでは、作品の印象がまったく異なるに違いない。このなんともユニークな登場人物に拍手を送りたい。(100分)※12日まで駅前劇場。17〜18日は桜美林大学PRUNUS HALLにて公演予定。

■データ
ソワレ/下北沢駅前劇場
6・6〜6・12(駅前劇場)
作・演出/横田修
出演/舘智子、藤崎成益、好宮温太郎、青木柳葉魚、中尾祥絵、工藤治彦、青木亜希子、市橋朝子、服部健太郎、太田善也散歩道楽)、小高仁、佐野陽一(サスペンデッズ)、地獄谷三番地(劇団上田)、代田正彦(北区つかこうへい劇団)、ムラコ(サミットクラブ)
舞台監督/田中翼 照明/鈴村淳 舞台美術/濱崎賢二(六尺堂) 宣伝美術/京 チラシイラスト/糠谷貴使 写真撮影/平地みどり 演出助手/藤田貴大 制作/タテヨコ企画制作部+森佑介