(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ともだちのともだち Ver.2」 RONNIE ROCKET Presents

客演したポツドール「激情」(再演)での怪演ぶりもまだ記憶に新しい仗桐安(じょうきりあん)率いるRONNIE ROCKET。97年3月に高多康一郎(仗桐安の旧名)を中心に早稲田大学演劇倶楽部のサークル内ユニットとしてスタートし、「観客を飽きさせない娯楽作品の提供」を信条として謳いながら、こつこつと活動を続けている。今回は、今年1月初演の「ともだちのともだち」を、早くもバージョンアップして再演する。
*以下、ネタバレしています。公演に足を運ばれる方は、その後にお読みください。
アパートとおぼしき一室。引っ越しを終えたばかりでダンボールが積まれた部屋で、ふたりの男がテーブルを挟み、互いに気まずそうにしている。ひとりはその部屋の主で、もうひとりはその友人の友人。引っ越しの手伝いに、友人を通じて駆り出された彼は、やがて戻ってきた友人に、この部屋には何かがいる、と耳打ちする。
一方、部屋の主は、電化製品の量販店で働いているが、そこで上司から携帯電話のクレイマーが持ち込んだ苦情に、奇妙なものがあったという話を聞かされる。その携帯には、かかってきた電話でありえない電話番号が表示され、そののち画面に赤い十字架が浮かびあがるという。そんな話をしていると、問題の携帯電話が鳴り出し、同僚が電話に出る。その数日後、件のクレイマーが来店直後に交通事故で死亡しているおり、同僚もその翌日から行方不明になっていることが明らかになる。
ちょっと長めのあらすじ紹介になってしまったが、いわずもがなのテーマは都市伝説である。ともだちのともだちという曖昧な人間関係の輪の中で起きていく、世間の噂にまつわる出来事が、どきどきするようなサスペンスとともに繰り広げられる。注目すべきは、怪異現象や真相が判らないまま混沌とした状況を次々と提出しながらも、物語の歯車をしっかりと前進させていく物語の面白さで、最後の最後まで観客を飽かさない。とりわけ、幕切れの一幕はなかなか印象的。この冬に上演されるというVer.3が非常に待ち遠しく思える出来映えだ。
不思議地底窟青の奇跡という会場は、普段は呑み屋なのだろうか。地下の狭い店内をガムテープで仕切り、ダンボールというシンプルな舞台装置を効果的に使っている。20人も入ったら満員という狭い客席ながら、密度の高い芝居にはなかなかのロケーションでした。ただ、上演中に地震があってグラリときた時は、ちょっとヒヤリとしたが。(90分)※前半は終了。後半は、6月8日から10日までのスケジュール。
■データ
マチネ/下高井戸不思議地底窟青の奇跡
6・1〜3、6・8〜6・10
脚本・演出/仗桐安
出演/澁谷正洋、成川知也、杉木隆幸(play unit-fullfull)、本井博之(コマツ企画)、町田水城(はえぎわ)、仗桐安
舞台美術/中島賢 照明/時岡祐太(LIGHT HAND) 音響/佐原王次郎 衣装/前川由梨 小道具/後藤真輔 演出助手/下田海人 舞台監督/井上礼一(水鳥組) 宣伝美術/寺部智英