(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「しゃべる猫とだらしないひと」猫の会 その1

ちょっと心がほっこりするような演劇作品を発信することが目的と、主宰の北村耕治が語るユニット猫の会の旗揚げ公演である。ユニット名のとおり、猫が主人公の物語だ。猫という題材は、ありふれているだけに案外取り上げ方が難しいと思うのだが、さて。
南米旅行から帰った飼い主の鞄に紛れ込んでいた虫を食べた飼い猫が、奇妙な伝染病にかかった。やがて、その病気は町中の猫たちへと広がり、保健所が猫狩りに乗り出す始末。日出男(佐藤達)の飼う雄猫のネコ(池田ヒロユキ)の仲間たちも、ノラクロ(バビィ)という家出猫の爪の一撃によって感染してしまう。次第に弱ってくる仲間を見かねたネコは、雌猫のミーコ(徳元直子)を伴って、飼い主に訴えかけようとするが。
物語は、大袈裟にいえば二層構造になっていて、飼い猫のネコをとりまく猫たちのコミュニティと、彼の飼い主である青年をとりまく人間の世界からなっている。このふたつの世界の接点となるのが、ネコと飼い主の日出男で、なぜかふたりは言葉が通じ合っている、という設定。
しかし、その日出男は、失恋の痛手から立ち直れず、無気力な日々を送っているという情けなさ。彼のもとには、姉や女友達らが彼を励ましに立ち寄るが、効き目はない。ところが、同じアパートに猫好きの美女が越してきたことがきっかけで、彼にもちょっとした転機が訪れる。
猫コミュニティを襲う危機的な状況に対して、飼い主が失恋で悩むなんざ人間の世界のなんと平和なことよ。いや、心からのほほんとした気分にさせられる物語である。どん底から這い上がった日出男がネコとコミュニケーションをとれなくなるというのが象徴的。複数の役者が客演していることとも関係があるのだろうが、桃唄309のほのかなテイストを感じる作品世界だ。
それにしても、池田ヒロユキのネコは(一見猫らしくないにもかかわらず)なんとも絶妙で、その力の抜け具合や達観が愉快だ。メスの野良猫ミーコを演じた徳元直子をはじめとする猫役者たちもいい味を出していて、作者なりの猫の世界をきちんと構築していたことに感心させられた。(85分)

■データ
マチネ/王子小劇場
5・31〜6・4
作/北村耕治 演出/三谷麻里子
出演/池田ヒロユキ(リュカ.)、伊坂亮 (東京コメディストアジェイ)、佐藤達(桃唄309)、澤唯(projectサマカトポロジー)、高園陽子(SPARKO) 田辺麻美、塚西勇太、徳元直子(劇団ぐるぐる牛)、中野架奈、バビィ(桃唄309)