(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「チューブラルームズ」双数姉妹

ここ数年、ベテラン役者陣の退団が相次ぎ、目に見えて役者陣が寂しくなった早稲田大学劇研のアンサンブル出身のベテラン双数姉妹。わたしが観た日は、客席上方から野口かおる嬢が舞台を見つめていました。まさか、彼女まで辞めたりしないよね、とちょっと心配。今回は、お馴染みが抜けて、その穴を7人の新人たちが埋めての新作だが、トップスの舞台上に設えられた大掛かりな舞台装置に、まずはびっくり。
男女がどこかに立て篭もっているらしい、という情報を聞きつけ、集まってくる人々。かたや、会社で使えないという烙印を押されながら、周囲の誤解から束の間成り上がった男。一方は、学校では教師から苛められ、家庭は崩壊という状況から、作家の妻の座に収まり、夫の成功をひたすら願う女。彼らに負い目の感じる会社の上司や、高校教師が、立て篭もりの現場にかけつけるが。ふたりは、どういう思いで、そんな行動に出たのか?
大きな土管よろしく、内側はベアリング仕掛けで、役者の歩行に合わせて回転する。舞台装置の面白さでついつい観てしまうが、ストーリーとの絡みはほとんどない。管の内側に、机を椅子などを固定する強引さで、観ている方ははらはら。(最後に、井上貴子が一回転するサービスがあって、拍手。)
話のつくりも貧弱だし、若手はまだまだの段階で、この仕掛けがせめてもの慰め、といったら言い過ぎだろうか。吉田麻紀子は、奮闘しているがまだ発展途上という感じ。野口かおるが出ないのだったら、せめて北京蝶々の帯金ゆかりクラスの元気な客演がほしいところだ。今林や小林の達者さはさすがだが、彼らにしつこく絡む存在が欠けている気がする。(115分)

■データ
ソワレ/新宿THEATER/TOPS
5・26〜6・3
脚本・演出/小池竹見 
出演/今林久弥、小林至、五味祐司、青戸昭憲、鰻屋喜平治、熊壊大介、河野直樹、宮田慎一郎、浅田依子、辻沢綾香、井上貴子、吉田麻起子
舞台美術/小池竹見、杉山至 劇中歌作曲/佐藤こうじ 舞台監督/村岡晋 照明/斎藤真一郎(A.P.S) 音響/島貫聡 衣装/小原敏博 宣伝美術/高橋歩 演出助手/小林英朗 制作/津田はつ恵