(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「永遠かもしれない」シベリア少女鉄道vol.17

シベリア少女鉄道をどう評価するかは、新しいものに対するちょっとした踏み絵みたいなところがあるようで、どうも素直に評価できないわたしは、こてこての保守主義者なのかもしれない。過去公演は、たった一度しか観ていないが、その「笑顔の行方」(2005年5月@サザンシアター)は、呆れてマジに頭に来たので。というわけで、2年ぶりのシベ少リベンジだが、実は客演の吉原朱美お目当てという別の動機もある。
とはいえ、正直、いささか感心させられた。漫才コンビの片割れ(前畑陽平)が、開演前の劇場舞台にぽつんとひとり。彼には、恋人(吉原朱美)、漫才の相方(加藤雅人)、姉(浜口綾子)を交通事故でなくした過去があって、彼らのことを回想している。そこに彼を訪ねてきた少女(森口美香)が、花束を渡す。彼女(亡くした恋人の妹か?不明。)と終演後言葉を交わす約束をする彼。そして、幕があがり、新しい相方(篠塚茜)と漫才が始まる。
2時間を越え、「永遠かもしれない」と観客を心配にさせる展開はご愛嬌だが、本作は正直あのシベ少かと、目を擦りたい気分に襲われた。幼稚な一発芸を最後にもってきて、そもそも稚拙な舞台をさらに台無しにした感のあった「笑顔の行方」とは大違いで、早々に今回のネタは明らかになる。しかし、そこからが凄い。漫才のさ中、相方の正気とは思えない暴走を、必死に追いかける相方。スポ根、アニメ、海猿忠臣蔵といった題材をネタで、スピード感あふれる物語のしりとり遊びが続いていくのだ。
前畑と篠塚は、前回とは見違える素晴らしさで、2時間超のハイテンション、出ずっぱりを走りきる。篠塚の困った顔の表情は、さすがに後半になると種切れになるが、それでも一本調子にならずに、きちんと物語にメリハリをつけているのは、彼女の存在感ゆえだと思う。成長しましたね。
少女の放置ギャグなどを見るにつけても、この劇団の本質は変わっていないと思うのだが、難所の峠をひとつ越え、ステップアップした印象がある。ただし、クライマックスのサザエさんネタは、前にも見せられた記憶があって、やや食傷。タイトルともかけての題材だとは思うが、劇団の売りにして毎回使いまわしが出切るほどのものとも思えず、次は勘弁してもらいたいと思う。
なお、客演の吉原朱美は、期待通りの好演。どこかレトロで、ファニーな彼女の芝居を観る機会がもっとほしいものだと思っていたところ、夏にかけて、はなとゆめ旗揚げ、ベターポーヅ最終公演と彼女の舞台が立て続けにある。なんとも楽しみだ。(130分)

■データ
ソワレ/池袋シアターグリーンBIG TREE THEATER
5・26〜6・3 
作・演出/土屋亮一
出演/前畑陽平、篠塚茜、加藤雅人(ラブリーヨーヨー)、吉原朱美(ベターポーヅ)、浜口綾子、石松太一、森口美香(劇団 OROGINAL COLOR)
舞台監督/谷澤拓巳+至福団 音響/中村嘉宏 照明/伊藤孝(ART CORE design) 映像/冨田中理(SelfimageProdukts) 衣裳/さかくらきょうこ 大道具製作/C-COM舞台装置 宣伝美術/チラガール 制作助手/小林由梨亜 制作/安元千恵 製作/高田雅士