(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「業に向かって唾を吐く」elePHANT Moon#4

ちらしの悪趣味なアートワークがやけに印象的なエレファントムーンの新作。作、演出の映像作家マキタカズオミが中心のユニットで、個人的にはポツドール乞局と地続きのナスティな負の世界観に特徴があると思っている。わたしは、昨年の「シュナイダー」に続く2度目の観劇になる。
高校教師の滝川(酒巻誉洋)が受け持つクラスの様子が、ここのところちょっとおかしい。といっても、勉強できない、素行が手に負えないと、親や教師を悩ませてばかりいた生徒たちが、急に生活態度が真面目になり、成績も上がり始めたからだ。この珍事に、父兄は却って心配になり、相談に押しかける母親までいる始末。その原因は、新興宗教に深入りした滝川の兄(尾本貴史)にあり、彼が生徒(山口温)を通じて、子どもたちに影響を与えていることに滝川も気づいている。ところが、その教団というのが、実はとんでもない代物で。
やや掴み所のなさがあった「シュナイダー」よりは、作者の意図するバッドテイストが前面に出ているのは、評価していいだろう。それを支えているのは、教団のマリア役を捨て身で演じる渡辺美弥子や、前回とは裏返しの役柄で一瞬にして舞台に冷たい緊張感を漂わせる竹岡真悟の好演あってのものだろう。教団の舞台裏をあっさりと晒したり、幹部たちが信者から思わぬ迷惑を蒙ったりする展開が面白いが、脚本的には、製薬会社の話が絡むあたりが判り辛く、もう少し手際良く説明してほしかった気がする。
なお、芝居の出来不出来とは関係ないが、足下がしっかりしていない狭い客席には、もう少し配慮がほしい。演出効果と関係もあるのだろうか、せめて客入れのピーク時には、客席の明かりをきちんと灯してほしい。暗く足下も不案内、切り立った客席で、何人か躓く観客がいて、危なかったです。(85分)

■データ
マチネ/王子小劇場
5・25〜5・29
作・演出 マキタカズオミ
出演/永山智啓、酒巻誉洋、山口温、坂倉奈津子、鱒田エンキチ、菊地奈緒、倉田大輔(国民デパリ)、岩田裕耳(メタリック農家)、竹岡真悟、尾本貴史、渡辺美弥子(電動夏子安置システム)