(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「絢爛とか爛漫とか(モダンガール版)」赤坂RED/THEATERプロデュースvol.1

自転車キンクリート(STORE)のお馴染みのレパートリー。93年に初演(シアタートップス)、98年に再演(紀伊国屋ホール)されている。モダンガール版は再演時に枝分かれしたもので、その時のキャスティングは、池田貴美子、歌川椎子、柳橋りん、柳岡香里だったとか。今回は、人気劇団と宝塚のキャリアをもつ女優の組み合わせで。
昭和初期を舞台に、文学を志す四人の女性たちの挫折と成長の物語を、彼女たちの友情を絡めて描く。苦労もなくすいすいと小説が書けてしまう薫(野口かおる)、耽美系の創作ではすでにプロのすえ(中谷さとみ)そしていつも仲間のリーダーシップをとるまや子(琵琶弓子)ら友人に囲まれ、デビューしたはいいけど第二作がちっとも書けない文香(沢樹くるみ)。季節の移り変わりとともに、それぞれの人生に転機が訪れるが。
いかにも飯島早苗らしい誠実な作りで、ほどほどの笑いもあって、安心して観ていられる。ただし、穏やかな展開が続くので、喰い足りなさをおぼえる箇所もある。例えば、薫が小説を棄てブラジルに行くことをあっさりと宣言し、小説の不器用な文香がそれを揶揄するくだりで、ふたりの間で戦わされる才能をめぐる議論など、型通りでつまらない。もっと突き詰めてもらいたい気がする。
第4場で、文香がまや子に小説のあらすじを語る場面も、やや単調で退屈。ある意味ハイライトの場面であるだけに、もう少し何か工夫があってもいいところだろう。
それぞれに持ち味があり、演技も安定している四人の女優たちも、さらに枠をはみ出すようなスリルがあれば、もっと良かった。そういう意味では、ひときわ達者な芝居で時に物語を加速させる薫役の野口かおるが期待どおりで、(彼女にしてはやや抑え気味だが)やはりいい味を出していると思う。(120分)※23日まで。モダンボーイ版もあり。

■データ
ソワレ/赤坂RED/THEATER
5・8〜5・23
作/飯島早苗 演出/御笠ノ忠次
出演/沢樹くるみ、野口かおる(双数姉妹)、琵琶弓子、中谷さとみ(劇団☆新感線