(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「冬のユリゲラー」ヨーロッパ企画第23回公演(雪組)

〈バック・トゥ2000〉シリーズと銘打って、2000年初演の3作品をまとめて再演するヨーロッパ企画2007年春ツアーの2本目。折りしも同じ下北沢で砂組が「苦悩のピラミッダー」(駅前劇場)を上演中で、一部役者が両劇場の間を全力疾走で移動し、ふたつの公演を掛け持つという趣向もある。
クリスマスイブの喫茶店に、次々やってくる男たち。彼らには、人にいえない秘密があった。サイコキネシス、テレパシー、透視、テレポーテイション。そう彼らは、世間でいう超能力者だった。今日は、それぞれの不思議な力を見せ合うために、この店にやってきたのだ。しかし、そこにちょっとした誤解から奇妙な男が一人交じったことで、事態はとんでもないことに。
イデアとしては、「苦悩のピラミッダー」よりもこちらの方がはるかに非凡。クリスマスというシチュエーションも活かしたお話づくりも上々だと思う。初演時は、上り坂の劇団らしい元気さもあって、さぞかし面白かったのではないか、と想像される。
しかし、今回の再演は、正直言って、何か喰い足りない印象が残った。理由として考えられるのは、この作品が、すでに過去にものになってしまっているからではないか。今のヨーロッパ企画の身の丈には合わないちぐはぐさがある。あるいは、旬を過ぎてしまったような、と言い換えてもいいだろう。
具体的には、役者たちの乗りで飛ばす前半と、物語重視になるその後とのギャップで、物語は後半明らかに失速する。役者たちは成長したのに、物語は成長していない、という言い方は因縁つけ以外の何者でもないが、これは、初演時にあったであろう双方のバランスが、崩れているように思えてしょうがない。
登場人物、エピソードなどを作りこんでいる分、風化も早いのかもしれない。その点、シチュエーション・コメディとして普遍の佇まいがある「苦悩のピラミッダー」とは、好対照の作品といっていいだろう。次の機会には、今の彼らに相応しい、もっと大胆にバージョンアップした「冬のユリゲラー」を、ぜひとも観てみたいものだ。(120分)※15日まで。

■データ
ソワレ/ザ・スズナリ
5・5〜5・15※大阪公演は終了
作・演出/上田誠
出演/諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、本多力、山脇唯・人羅真樹(イクイプメン)・首藤慎二(ベビー・ピー)・岡嶋秀昭、他