(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

岡崎隼人/少女は踊る暗い腹の中踊る(短評)

あまりいい評判が伝わってこない第34回メフィスト賞受賞作。しかし、わたしは評価します。謎の殺人鬼に遭遇し、連続幼児誘拐事件に巻き込まれた19歳の少年が、血みどろの惨劇を通じて、自らのアイデンティティーに直面する。ま、そういう意味でノワールという見方も、存在しますね本作。
わたしが買うのは、ひたすらダークな世界を饒舌に構築する才能で、ここに出現している世界は、現実の常識とは無縁ながら、明らかに独特の世界観が支配し、独自のルールが存在する。そこで犯人の歪んだロジックにのっとった血みどろの惨劇が繰り広げられるわけだが、そこにはその世界の中だけで有効な不思議な説得力がある。
舞城王太郎エピゴーネンという批判もあると思うが、〝少女は踊る暗い腹の中踊る〟のクレイジーな世界は、その模倣という括りの中には納まりきらないエネルギーを内包している。時代に咲いた徒花や突然変異の一発屋として片付けられないためにも、沈黙することなく次回作をリリースしてほしい作家だ。必読。(ただし、読者は選ぶと思うが)

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)