(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝レミゼラブ・ル〟演劇キックプロデュース

キャスティングの魅力、そして何よりブルースカイが久々の作、演出という売り文句に引き寄せられた。実は、ブルースカイが率い、池谷のぶえを擁してした(演劇弁当)猫ニャーは、惜しまれつつ2004年に解散しているが、不覚にもわたしはその舞台を一度も観ていないのだ。わずか数年前のことだが、ナンセンスの極北であった噂は、伝説のように伝わっていて。
真面目な青年ジャン・バルジャン(廣川三憲)は、ある日、通りがかりに干されていた中学生のスクール水着を盗んでしまう。たちまち逮捕され、刑務所へ送られた彼は、19年後晴れて出所する。しかし、異常者のレッテルを貼られ、肉親からも疎まれる彼を唯一受け入れてくれたのは、ル・歌舞伎町の人々だった。その町で、ついには町長にまでなったジャン・バルジャンだったが、そんな彼を失脚させるために、虎視眈々とつけ狙う警察官(小村裕次郎)がいた。
期待値が高かった分だけ、厳しい評価になってしまうが、この程度かというのが正直な印象。〝レ・ミゼラブル〟という堂々たる下敷きがある分だけ、それを壊しきれないもどかしさのようなものが残る。原発や幼児嗜好という毒を持ち込みながら、その毒を十分に醗酵しきれていない気がする。ギャグも小味だし、シュールな空気が希薄で、密かに期待していた何かが暴走する場面はほとんどなかった。
とはいえ、顔ぶれの豪華さだけのことはあって、個々の役者たちはさすがに期待を裏切らない。NYLON100℃の〝ナイスエイジ〟の印象がいまだ強烈な、廣川三憲、原金太郎、池谷のぶえの3人は言うに及ばず、芸達者な大堀こういち、新井友香、高木珠里らも持ち味を発揮し、賑やかな舞台になっている。一種の企画もの(演劇ぶっく社創立20周年記念公演)ととらえれば、これで満足する客は多いかもしれない。
ただ、わたしには退屈な時間が結構長かった。主催者側からの要請もあるのだろうが、あの内容で3時間を越える長さというのも、ちょっと無理があるような気がする。(休憩15分を挟み、210分)※9日まで

■データ
初日ソワレ/新宿シアターアプル
4・5〜4・9
作・演出/ブルースカイ
出演/廣川三憲、大堀こういち、原金太郎、新井友香池谷のぶえ、小村裕次郎、加藤啓、辻修、市川訓睦、野間口徹、加藤直美、吉本菜穂子、高木珠里、猫ひろしいとうせいこう、外
舞台監督/福澤諭史+至福団 美術:伊藤雅子 照明/関口裕二(balance,inc.DESIGN)
音響/SoundGimmick 衣裳/三浦将起(Chacott) 衣裳協力/Chacott 音楽/ブルースカイ 演出助手/相田剛志 振付/振付稼業air:man 映像/仲井陽(ケシュ#203)