(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝頂戴〟蜻蛉玉第13回公演

島林愛の前説から本編への入りが、前回の公演よりもバリアフリーになった感じ。しかし、あの耳かきの話(家でテレビを見てて、誤って耳かきが耳にささり、血が出た話)は、本当だとしたらすごく怖いぞ。
若いカップル(神林裕美、シトミマモル)のお話で、彼らをめぐる現在と過去が交互に並べられていく。ふたりは結婚しているらしい。でも近く離婚をするらしい。どうやら、彼女の方が心の病を抱えているらしい。ってことなどが次第に判ってくる。
夫の両親や彼女の友人などが登場するそれぞれのエピソードはパッチワーク状で、それをうまく繋げていくには、観客もある程度の想像力を要求される。しかし、その場面場面はよく出来ている。一部不条理な展開もあって、そこもまた彼らっぽいところだ。
聖と俗の切り替え(言い換えれば、シュールな流れの中に、下世話なエピソードを配置するやり方)のうまさは、蜻蛉玉のひとつのセールスポイントだと思う。やや退屈だなぁ、とか、判らんなぁ、と思っていると、唐突にリアルな日常が差し挟まれて、はっとさせられる。
それと、もうひとつは性的なアプローチの大胆さ。これは、結構思い切ってやっている感じ。結果として、物語が不条理劇へ流れていっても、最後の最後まで、観客サイドの好奇心を途切れさせない効果がある。今回は、ヒロインの妄想と思われる夫と義母の近親相姦のリアルなセックスシーンなどもあって、かなりどっきりさせられました。
ヒロインの神林裕美が、難しい役を魅力的にこなしています。(90分)※2日まで

■データ
マチネ/こまばアゴラ劇場
3・28〜4・2
作・演出/島林愛
出演/神林裕美、打田智春、北村延子、安村典久、小松留美、熊埜御堂彩、シトミマモル、塚田知彦、橋本仁(ひょっとこ乱舞)、島田曜蔵(青年団) 
舞台監督/藤本志穂(うなぎ計画) 舞台美術/松村知慧 照明/伊藤泰行