(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝いやむしろわすれて草〟五反田団第34回公演

前回の私小説的な世界(さよなら僕の小さな名声)から、一転して世界文学の本歌取りかと思いきや、今回の演目は再演ですね。とはいえ、わたしが連想したオルコットの〝若草物語〟とは、主人公ら四人姉妹の中に、病弱な子がいたり、背の高い子がいる程度のことですけど。
八百屋の四人姉妹は、喧嘩もするけど仲もいい。家庭の事情で母親がいないが、長女が家事を受け持って、父親を手助けしている。物語は、おおよそ10年の歳月を往き来しながら、四人姉妹の過去と未来を描いていく。
姉妹たちの無邪気なやりとりや、濃やかな愛情。そこに、そこはかとない死の陰りが顔を覗かせたり。三女役端田新菜(青年団)は、長い時間、ほとんど科白のないままたった一人舞台にいるシーンがあるのだが、無言で表現するやるせない思いが非常に印象的。同じく、不器用なふるまいで、入院中の妻(三女の友人という設定)への愛情を表現する黒田大輔(THE SHAMPOO HAT)も好演といっていいだろう。
最後に、過去の場面にもう一度引き戻し、欠けていたピースに相当するシーンで絵柄を完成させる幕切れも感動的だ。四人の少女たちのディテールが丁寧だが、それを現在と過去で対比してみせるという手法が、大きな成功を収めていると思う。(80分)※駒場アゴラ劇場にて、楽日マチネ。