(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝アダム・スキー〟スロウライダー第9回公演【速報】

ゴーストストーリーが、オーソドックスであればあるほど映えるのは、人間の恐怖の感情というものがプリミティブなものだからに違いない。そういう意味で、スロウライダーの〝アダム・スキー〟は、非常によく出来た怪談ではあるのだけれど、とてもオーソドックスとはいえない落ち着かない雰囲気のせいで、大きく損をしているような気がする。
物語は、折口信夫とおぼしき著名な民俗学者の死後、その4人の弟子たちが故人の自伝を執筆(代筆?)しようとするが、その過程でさまざまな怪異現象が彼ら関係者を襲う、というものだ。先に落ち着かないといったのは、故人を取り巻く人間模様がいたずらに複雑すぎて、その辺の読み解きに観客は神経を向けざるをえないことに起因する。また、先生がどういう人物だったかをめぐり、登場人物間で捉え方が異なるというところも、その部分の主張が強すぎるせいか、恐怖という主調音には同期できていない気がする。
ラストシーンは、物語の怖さを決定付ける凄みがあるが、それはすなわち、そこに至るまでの弱さの上に成り立っていることになるのではないか。序盤の科白のやりとりが非常に聞きにくかったことも、その世界に入り込めなかった理由のひとつ。劇場の広さで、ふたつの場面を分けたのは悪くないが、現在の方がやけに遠く感じたのもマイナス点だった。(100分)ソワレ。三鷹市芸術文化センターにて3月25日まで。