(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

赤朽葉家の伝説/桜庭一樹(短評)

ラノベから越境してきた一昨年の「少女には向かない職業」を読んでマークしていた桜庭一樹だけれども、早くも決定打か。鳥取県の旧家を率いる女性たちの3代にわたるサーガである。
3人の女性のそれぞれの年代記を順に並べた3部構成。千里眼を謳われた祖母の物語はファンタスティックな伝奇風、コミック作家として成功した母の物語はポップな青春小説風、そしてしめくくりのわたしの物語は全編をしめくくるミステリ的な趣向と、1部ごとに物語の色合いがまったく異なる。
欲をいえば、第2部が映画の「下妻物語」にまるまるシンクロするのが引っかかるけど、それを差し引いても抜群のリーダビリティには舌を巻かざるをえない。高度成長期以降の昭和から平成にまたがる現代史と寄り添う物語の形式も印象的だ。必読。

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説