(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

ダブル/永井するみ(短評)

まったく評論家受けしなかったのかしらん、〝このミステリーがすごい!〟のベストテンではすっかり無視されてしまった永井するみの〝ダブル〟だが、実は昨年の収穫の一冊に数えていい傑作である。1996年に〝隣人〟で第18回小説推理新人賞を受賞し、その翌年〝枯れ蔵〟(新潮ミステリー倶楽部)で長篇デビュー。そろそろ10年選手になる彼女も、いよいよミステリ作家として脂が乗ってきたということか。
トラックに轢かれた女性、駅の階段から転落したサラリーマン。ふたつの死亡事件の繋がりを見つけた女性ライターは、好奇心と功名心から事件を捜査し、犯人とおぼしき人物をつきとめる。しかし、その容疑者は、真相に迫ろうとするライターを逆に翻弄し、事態は意外な方向へと向かっていくのだった。
一向に先の読めない展開がユニークで面白い。ミステリとしては定石ともいうべき面白さもあるにはあるが、なんといっても、その捩くれたサスペンスが素晴らしい。読者を苦い笑いへと導くオフビートな語り口を大いに買いたい。必読。

ダブル

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