(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝煙の先〟贅 第1回公演

即興性重視を志向しているとおぼしきユニット、贅の旗揚げ公演。それに先立つプレビュー(昨年12月)は残念ながら観ていないが、岩井秀人(ハイバイ)、前川知大(イキウメ)、板垣雄亮(殿様ランチ)、瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)という顔ぶれだけで、興味を惹かれる演劇ファンは多いだろう。もちろん、わたしもその一人。
生花店での出来事。万引きで捕まった女性(内田慈)は、店長の古橋(板垣雄亮)にネチネチと責められている。彼女は、大学院で植物生殖遺伝学を研究しているらしい。彼女を可哀そうに思って、助け舟を出す店員の天野(瀧川英次)。しかし、店長は彼女の万引の動機に、非常に不審なものを感じていた。そして、案の定、彼女には金田(岩井秀人)という共犯者がいて、よからぬ計画を企んでいた。
コアな部分だけで45分程度の内容だという。日によって長さが違うらしいが、わたしが観た日は90分程度だった。基本的なプロットだけを確認しておき、局面局面で即興の応酬、と推測するが、どうも即興の方が物語よりもわざとらしく感じられてしまうのが弱点だ。
そもそも、中篇とはいえ、前川の脚本はそれなりに手を入れれば膨らんでいくような可能性が感じられ、それを小手先の即興でこねくりまわしているのはなんとも小賢しい印象が先にたつ。そういう意味で、脚本の選択に誤りがあるような気がする。もっと痩せた物語の方が、即興的な展開には向いているのではないか。
いや、それを知ってのハードルの高さなのかもしれないが、だとすれば今回に関していえば役者たちのアドリブはその高さを残念ながらクリア出来ていない。わたしが観た回は、受けにまわることの多い内田慈が、他の役者たちのつっこみをあっさりとかわす場面が多かった。(ま、それくらい内田の堂々たる舞台さばきが目立ったということで、彼女のファンとしてはそれはそれで楽しめたのだが)
といっても、1度観ただけでは、各回ごとの即興性にどれくらいの幅やバリエーションがあるのかは不明。次回は、リピーターとなって、各回ごとの違いを見極めてみる必要があるかもしれない。(90分)

■データ
マチネ/渋谷Gallery LE DECO
1・16〜1・21
脚本/前川知大 演出/不在
出演/板垣雄亮(殿様ランチ)、岩井秀人(ハイバイ)、瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)、内田慈
照明/松本大介(enjin-light)、音響/荒木まや、制作/原田瞳