(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝洗濯鬼逃げた〟くねくねし第6回公演

くねくねしは、明治大学の「騒動舎」のメンバーを中心として90年に結成された劇団で、当初は「劇団ノリのいい会社」を名乗り、その後「悪運ダイヤ」と改名、2年ほど前に、さらに心機一転、今の劇団名になった。現劇団名の〝くねくねし〟には、古語で「ひねくれてる」「ねじくれてる」という意味があるらしい。
とはいえ、〝洗濯鬼逃げた〟を観る限り、屈折感よりはストレートさが前面に出た劇団とみた。離れ小島で暮らす鬼のファミリー。役割分担を徹底し、合理的な社会生活を送る彼らだったが、あるとき洗濯を担当する洗濯鬼が失踪し、島は汚れ物の山に。パニックに陥った鬼族は、族長の命令で、洗濯鬼の捜索を開始する。
呆れるくらいに直球勝負で、児童劇かよ、と突っ込みたくなるほど、あっけらかんとした物語の運び。話の内容には、毒も感じられなければ、寓意のようなものも伝わってこない。
だが、癖がないのかといえば、それは違うわけで、ある面で非常に濃厚なテイストを持っている。例えば、登場する役者の個性だが、観終えたあとも、その顔が浮かぶ役者の多いことよ。画像を使ったり、小味な面白さもあって、筋の運びにゲーム感覚のような雰囲気があるのも特徴かもしれない。
ただし、どうしても物足りない印象が残るのは、物語が不在だからだろう。そういう意味で、同じくおとぎ話的な世界を展開するメタリック農家などとは、決定的に異なる。つまらなくはないが、観終えて拍子抜けしたような脱力感をおぼえる。不思議な劇団だ。(90分)

■データ
2006年12月9日マチネ/中野劇場MOMO
12・6〜12・10
脚本/杉林充章 演出/小田井孝夫
出演/三土幸敏、新倉壮一郎、真下かおる、蒸し鶏、塩田泰典、吉川かおり、奥村香里、藤本征史郎、持永雄恵、猿飛佐助(ベターポーヅ)
演出助手/坂野朗子 舞台監督/中西隆雄 照明/正村さなみ(ライズ) 音響/中村嘉宏(atSound)、井川佳代 映像/岩倉雄一郎、小松好幸、柳昌典 音楽/松前公高、寺田創一、0MB、ヤーマルク・マンハッタン、谷蟇 宣伝美術/藤本"ANI"健太郎 制作/今井由紀