(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝キケンなニオイはしてたよね〟マナマナ

マナマナは、宮本勝行と西田薫のユニット名で、今回の〝キケンなニオイはしてたよね〟はその第1回目の公演にあたる。宮本は僕らの調査局からにんじんボーン、西田はショーマでの活躍が懐かしい。この世界では息の長い活躍を続けている二人だ。
除夜の鐘の人出で賑わう土浦にあるお寺の境内。小、中、高と同じ学校に通っていた女性たちは、学校を卒業から二十年近く(?)たった今も、誰からともなく年に一度、大晦日にここに集まる。今年も、お寺の娘敏子(新井友香)が、お堂の縁側の掃除をしていると、そこにかつての同窓生たちである千賀子(渡辺直美)、洋子(依田朋子)、宏子(西田薫)、純子(森若香織)が次々やってくる。
話題は、かつてのクラスメートや恩師のことから、やがて敏子の寺の文化財を修繕したいという話をきっかけに、寂れる一方のわが地元をなんとかできないか、という町おこしの話へ転がっていく。彼女たちは入れ替わりながら、遠慮のないやりとりを続けていくが、他愛のないことからそれがエスカレートしてついには喧嘩になり、キレた宏子は東京へ帰ってしまう。
地元の呉服屋の娘だったり、東京で時代の先端をいく仕事をしていたり、5人の今の境遇はさまざまだ。その違いから軋轢が生じ、茨城弁の語調の強さもあって、各人の価値観の違いが浮き彫りになる一幕もある。
しかし、物語の進行とともに、彼女たちには、この町で過ごした時間という、かけがえのない共有物があることが観客には判ってくる。おそらくは本人自身も意識していないであろう、乱暴なやりとりの裏側には仲間への思いやりが隠されており、そこからしみじみと彼女たちの絆が見えてくるのだ。とりあえずは男、という独身の彼女たちに共通の価値観で締めくくるのも心地よい。
ほとんど会話だけで構成された脚本の面白さも去ることながら、なんといってもベテラン女優たちの技量が、この物語を会話劇として成り立たせている。この顔ぶれならではのやりとりの妙味がたっぷりと出ていたと思う。幕切れのファンタスティックな出来事も、ちょっとしたサプライズとして悪くない。(90分)

■データ
2006年12月2日マチネ/新宿スペース雑遊
11・27〜12・3
作・演出/宮本 勝行
出演/新井友香(劇団宝船)、森若香織、依田朋子、西田薫、渡辺 直美(時々自動)
照明/倉本泰史(A.P.S) 音響/青木タクヘイ(Stage Office) 舞台美術/寺岡崇 演出助手/田中順 舞台監督/村岡 晋 宣伝美術/坂本 洋祐 制作/安田 有希子(axis)