(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

さよなら、ウォーラス

気がついたら、解散してたよ、京都のウォーラス。彼らのHPにアクセスすると、〝ウォーラスは解散しました〟の寂しいメッセージが。ちくしょー、評判のライブアクト、1回も観られなかった!

ウォーラス(WALRUS)は、その昔おかげ様ブラザースに在籍していた山崎ゴローが98年に結成したバンドだ。紆余曲折と何度かのメンバーチェンジを経て、メンバーが固まったのは2001年に4代目のボーカル、シイバが入ってからのことらしい。面白いと思ったのは、それまで在籍したボーカリストの中には上手さでは上というような人材もいたらしいのだが、最初はあまりぱっとしなかったシイバが正式加入してから、ぐんぐんいいバンドになっていったという。そして、その運命の出会いが、バンドとして開花するのは2004年に入ってからで、シイバのパフォーマンスが派手になるとともに、ライブも含めていわゆるウォーラスの形というのができあがったそうだ。

特異点の部屋〟というアルバムは、ちょうどそんな頃(2004年9月)にリリースされた彼らのファーストアルバム。収録曲は6曲で、トータルの演奏時間は30分強しかなく、フルレンスではない。いわゆるジェネシス・チルドレン*1の音なのだけれど、本家のフォルムをなぞっただけだとか、パクリに終始するといったジェネシスのフォロワーにありがちなパターンとは無縁で、独自の世界をすでに構築している。彼らの音を新月の北山真がマジで絶賛したというのも、十分に頷ける。

(曲目)1.飛び込んできたスクリーン、2.フリーデルとカーテルリース、3.僕のワークショップ、4.deceiver、 5.インタビュー、6.真っ白な途

実はこの1stを手に入れたのはごく最近のことで、解散を知って、あわててプロクレ系の通販サイトのMusictermに注文した。わたしのウォーラスとの出会いは、去年、御茶ノ水ディスクユニオンプログレ館で見つけた2ndの〝コロイダル〟だ。最初はちっともプログレらしくもないし、落ち着かない音だと思っていたが、聴きこんでいくうちに、その違和感が馴染んできて、心地よさに変わっていった。
どこかでジェネシスの音に繋がるのだけれど、それがどこかを具体的に説明するのは難しい。1stと比較すると、カラフルで開放的な印象があり、バンドとしての成長をうかがわせる。

(曲目)1.星喰いのパレード、2.どこかにある場所どこにもない場所、3.星の館、4.リリカの描いたボート、5.紙飛行機、6.リアルガード・ゴンドラ・オン・ザ・ラスト・オブ・ザ・ワールド、7.雑草を育てる男、8.薬瓶と覚醒、9.ピンホールカメラ

そもそもライブを積み重ねてきた彼らだが、バンドのスタイルが完成した2004年以降は、京都、大阪方面でかなりの数のギグをこなしていた。しかし、東京にやってきたのは遅く、2ndの〝コロイダル〟をリリースしてからで、今年2006年になってからの秋葉原のdress TOKYO(2006.1.15、対バン:interpose+、月兎)と吉祥寺のシルバーエレファント(2006.2.4、対バン:金屬恵比須、THYNK∞F)の2回だけだったはずだ。わたしは、不覚にも次があると思って両方とも見送ったが、その直後に解散。いやはやショックでした。今から思えば仕事なんて放り出しても、駆けつけておくんだった。こういう悔しさはあとをひく、嗚呼。
フロントマンのシイバの独特のライブアクトには定評があって、さまざまメイクやかぶりものを駆使して、ピ−ター・ガブリエルそこのけのシアトリカルなステージを展開していたらしい。そんなウォーラスのライブも、京都寺町四条の都雅都雅(2006.3.5)と大阪桜ノ宮のガラガラ(2006.3.18)が、最後のステージとなってしまったとおぼしい。
メンバーは、次のとおり。
 ・シイバ〜椎葉光行 (vo,flute)
 ・山崎ヒデキ(g)
 ・山崎ゴロー(b)
 ・岡部亘(ds)
山崎ゴローと岡部は80年代にメジャーで活躍したおかげ様ブラザースで活躍したことで知られる。岡部は、その後のb-flowerにも在籍、現在も新感線の〝SHIROH〟や〝メタル・マクベス〟、さらにはクイーン・マニアなどへの参加もあって、ひっぱりだこのドラマー。自らのバンド月と蛙、鞴座の活動も活発なようだ。個人的には、椎葉(シイバ)の動向が気になるところなのだが。

*1:日本では、アタラクシア、シンデレラ・サーチあたりがこの系譜に属する。金属恵比寿も、ちょっとそうかも。