(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝スペインの母A〟散歩道楽

漠然と観たいと思っている芝居は多いけれども、行く!と決めるのは、公演直前というケースが実に多い。でも、そういう気ままな観劇がかなわない場合があって、25名のキャパシティで4公演しかないという散歩道楽の〝スペインの母A〟も、予想される競争率を考えると、到底無理だろうなぁ、と諦めていた。それが、たまたま直前に覗いたHPに、キャンセル待ちあり、というのを見つけて、だめもとと思って劇団にコンタクトをとったところ、追加席でもよければ、という条件でチケットが手に入ることになった。ラッキーだ。
会場のDie Katze は、新宿のシアター・サンモールにほど近い(隣か?)紅茶とワインのお店というふれこみで、なるほど行ってみると、25名の定員というのもむべなるかな。カウンターもあるやや横長の店のほぼ中央、壁寄りに四人がけのテーブルがしつらえてあり、そこがお話の小さな舞台となる。久しぶりの合コンを終えた四人の女性が、少しのみ足りないので、やってきたのがこの店。ひとりが、その店のオーナーの血縁者ということで、閉店後のこの店でワインを呑むことになった。30代後半が3人と20歳そこそこが1人。酔った勢いもあって、あれこれ会話が弾んで…。
聞きたいが怖い。おそらく、男性のほとんどがそう思うであろう、酔っ払い4人の女性(しかも、それぞれチャーミング)たちのここだけの話。お酒のせいで、いつもより多い一言が、あれこれ狭いテーブルに波風をたてていく。中には、ちょっとした竜巻も巻き起こるのだけれど、しかしそれをも呑みこんで、静かに流れていく時間の感覚がなんとも心地良かった。
短い芝居なので、入り込みやすいように前説を入れたのだと思うが、あれは蛇足でしょう。あの設定で、役者たちが席につけば、3分とたたないうちに何も知らなかった観客もそのシチュエーションを察する筈なので。出演者の中では、若い客演の松本久未もがんばっているが、散歩道楽のベテラン3人がさすがの色気と大人の女ぶりで、いい空気をかもし出している。追加席ということもあって、四人の女優さんの顔をじっくりと眺められなかったのがちょっと残念。もう少し観ていたい、もといもう少しこの四人と飲んでいたいな、と思うことしきりのステージだった。(40分)

■データ
2006年9月22日ソワレ/新宿ディーカッツェ
9・20〜9・23
作・演出/太田善也
出演/いしいせつこ、藤本樹子、川原安紀子、松本久未(劇団*夢彩色)