(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝UNDER GROUND〟庭劇団ペニノThe 13th garden

そもそも〝庭劇団〟とは何か?という素朴な疑問にとらわれてしまう庭劇団ペニノ。作・演出のタニノクロウを中心に、2000年に旗揚げ。医大で学生演劇をやっていたタニノが、卒業後もそれを継続するために立ち上げた劇団のようだが、当時のメンバーはいまや映像を担当する玉置潤一郎のみ。個人的には、今回の〝UNDER GROUND〟は、制作の野平久志や今回客演の安藤玉恵といった名前を経由して、ポツドールの文脈を探そうとしたのだが、それにはちょっと無理があったかもしれない。
幕があがる前から、すでに3人のジャズメン(佐山こうた(p) 中林薫平(b) 長谷川学(d))は舞台上手の上部にしつらえられたバンドピットのようなところに入り、演奏をはじめている。幕があがると、舞台上にはやや古びたタイル床の手術室のセットが整い、まんなかには大きな手術台がある。そこに、ひとりの小人(マメ山田)が上手の小さな扉から登場し、書類を見たり、テーブルの上で何やらやったり。やがて、彼が姿を消すと、今度は白衣の看護師たち(安藤玉恵 佐山和泉 島田桃依 瀬口タエコ 保坂エマ、吉原朱美 横畠愛希子)が登場し、麻酔で眠る太った男の開腹手術を開始する。そして再び始まるバンドの演奏。いつのまにか、小人もまた登場し、水着に着替えて、遊ぶように手術に参加する。手術のクライマックスが終わると、女性たちはひとりまたひとりと退場していく。そして、静寂につつまれた手術室の中で、最後に小人が意外な場所から観客の前に再び姿を現す。
通常の演劇とは違うという予備知識をもって臨んでも、やはりわたしの中では、落ちるべきところにストンと落ちなかったという不満感が残った。芝居そのものではなく、ありえないシチュエーションと、音楽のコラボを楽しむもの、それは判っているのだが。舞台に登場する小人は、いわば手術室に出現する妖精的な存在で、コメディリリーフの役をも果たしている、といったところだろう。
しかしそれでも、わたしの中では、本能に近いものとして、安藤(ポツドール)や佐山(東京デスロック)、吉原(ベターポーヅ)といった贔屓の女優たちの芝居ぶりを観たいという思いから逃れられなかったものと思われる。手術室の芝居(というよりはパフォーマンス)のアート性を否定するつもりはさらさらないのだが、やはり彼女たちを起用するならば、匿名の存在としてではなく、女優の姿として観たかったな、という気持ちがどうしても残ってしまう。作り物とはいえ、手術場面が生理的につらかったというのも、この舞台を素直に受け入れられなかった理由のひとつかもしれないが。
ただ、書いておかねばならないのは、トリオのジャズ演奏は、聴いていて、とっても楽しかったということだ。しかし、いかんせん、この日はジャズを聴くことが目当てではなかった。というわけで、わたしとしては、不完全燃焼の気持ちが残った庭劇団ペニノの舞台だった。

■データ
2006年9月16日ソワレ/下北沢ザ・スズナリ
9・15〜9・20
舞台監督:矢島健 舞台美術:田中敏恵 演出助手:川嶋はづき 照明:今西理恵 宣伝美術:野崎浩司 /DMイラスト:坂口時継 構成助手・撮影:玉置潤一郎 構成補佐:海老原聡 写真:田中亜紀 メイク:井上悠 WEB:佐田丘仁子 PA:阿部将之制作 樺澤良・河口麻衣・小野塚央
プロデューサー 野平久志