(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝ギロンと探偵の冒険/ハリスさん新聞社〟トリのマーク(通称)

劇団名が鳥のシルエットで、読み方は自由という〝トリのマーク(通称)〟は、今年、豊島区西巣鴨にある廃校となった中学校の校舎を利用したにしすがも創造舎という会場で、〝ギロンと探偵のいる2年1組〟というスペースをオープンし、親子対象のワークショップを行ってきたという。今回の〝ギロンと探偵の冒険/ハリスさん新聞社〟という公演は、その経緯を踏まえてのものだと思われ、観客は学校の下駄箱でスリッパに履き替え、2階の長い廊下を歩いて2年1組への教室へと向かう。
何の変哲もない普通の教室。その奥には探偵事務所の机が置かれ、壁には探偵のマントと帽子がかかっている。真ん中に敷かれた絨毯のまわりに、学校の備品であろう椅子が20脚くらい置かれている。そこに探偵(柳澤明子)がぬいぐるみのギロンを抱いて登場。最近、このあたりで事務所あらしが横行していることをしきりに心配する。で、そこにやってきたのはモリアーティならぬもり君(山中正哉)。彼は、おばあさんからの手紙を届けてくれたのだが、探偵はなぜかその手紙が気に入らない。すぐに引きだしにしまってしまい、魔よけを切ったりしている。放置していいのかと、問いかけるもり君に、はぐらかすような答えを繰り返すマイペースの探偵。そこに、黄金の仮面をかぶった珍客がやってきて。
劇団のホームページに掲載されているプロフィルによれば、〝ギロンと探偵〟のシリーズは、トリのマーク(通称)の公演やワークショップなどに登場するキャラクターで、1998 年六本木ストライプハウス美術館での公演「庭園の探偵」で初登場したらしい。以来、このふたり(いや1人と1匹、いやいやぬいぐるみはどう数えるのだろう?)は繰り返しこの劇団の作品に登場し、数々の謎を解決、あるいは謎を深めてきたそうな。
初めて観て感心したのは、登場人物たちのテンポいい掛け合いや絶妙な間の取り方が、なんとも心地よい雰囲気を生み出していること。ミステリ劇というほど物語性の強い内容ではないが、知らず知らずのうちに、ハートウォーミングなユーモアの世界に引き込まれている自分を発見。劇中劇ともいうべき紙芝居があったり、セットを使っての冒険行(?)もあったりと、短い時間とはいえ観客をもてなす工夫も十分になされている。子どもからのウケもさることながら、大人の観客が引き込まれまるのも十分理解できる。
しかし学校の教室という会場、探偵とギロンというコンビにとっては、まさにぴったりの舞台だ。(50分)

■データ
2006年9月1日マチネ(平日昼ギャザ)/にしすがも創造舎
8/30〜9/2