(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝山荘の女たち〟競泳水着特別公演

競泳水着を名乗る劇団に関する予備知識はほとんどなく、〝始まりはいつも嘘〟というミステリ劇を、昨年秋に同じ会場で上演したということだけは、インターネット上の情報で知っていた。残念ながら、わたしはそれを観ていないのだが、ミステリ劇を得意とするというだけでわたしのアンテナは敏感に反応することもあって、劇団の再出発となる作品らしい〝山荘の女たち〟に足を運ぶことにした。
山奥とおぼしき山荘に、3人の男女が到着する。男(上野友之)に導かれてこの山荘を訪れたのは、実業家として著名な会社会長の娘のつくみ(松村綾乃)と友人の江里子(山口温)だった。それを出迎える矢沢麗子(白井小百合)は、会長の指示でこの山荘に派遣されていた。やがて、少し遅れて、会長のかつての愛人だった女優の市村ひかる(絵崎由花)もやってくる。
2時間後、長湯をしていたという会長の弁護士(市岡拓)が浴室から出てきて、会長は彼らがやってくる前にヘリコプターで山荘に到着し、2階の部屋に居るという。しかし、内線電話をかけても応答はなく、その部屋は外から鍵がかけられていた。直前に聞こえたパンという音が気にかかり、悩んだ挙句に一同は鍵のかかった扉を破る。すると、そこには眉間の間を銃で撃たれた会長の死体が横たわっていた。
良くも悪くも、ロベール・トマあたりが書きそうな推理劇だ。ミステリ劇としての弱点は、暗転を安易に使っているところ(フェアプレイとは言い難い)、一部不自然な箇所があるところ(サプライズがやや強引なため)、あたりだろうか。しかし、どんでん返しのカタルシスはあるし、最後に(かなり苦しいにせよ)もうひとひねりしようという欲張りがあって、ミステリ劇へのこだわりは買える。役者は全般に未熟さが目立つものの、キャリアを考えれば、まだどうこうの評価を与える段階ではないだろう。(客演の絵崎(ZUYI)と市岡(NineStates)がいい)とりあえずは、次回以降の公演を、期待を込めて見守っていきたい。


■データ
2006年7月23日マチネ/早稲田どらま館