(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝開放弦〟パルコ+リコモーション プレゼンツ

根が貧乏性のせいか、ややもするとお芝居もコストパフォーマンスを考えてしまう。そんなわけで、この〝開放弦〟も、チケット代8000円というのが、ついつい気になってしまって。
のどかな田舎の庭先に、鴨の死体がころがっている。たまたま通りがかった素江(犬山イヌ子)の運転する車が、野生の鴨をはねてしまったのだ。家主の友人依代京野ことみ)は、気にすることないと言うが、遅れてやってきた夫の新藤(河原雅彦)ともども、責任を感じてなかなかその場を立ち去らない。
そこに、男女が三々五々帰ってくる。その日は、この家の主である遠山(丸山智美)と恵子(水野美紀)の結婚式だった。バンド仲間の門田(大倉孝ニ)や依代は、唐突ともいえるふたりの結婚に、腑に落ちないものを感じていたが、その背景には遠山が背負った多額の借金の問題があった。門田は、ネット配信をきかっけに大ヒットとなったバンドの曲の印税で、遠山を借金と偽りの結婚から開放しようとするが、なぜか遠山は借金を返そうとしない。そんなある日、彼らのバンドの夢が潰える事件が起きる。
借金のために愛なき結婚をした男女が、やがて本当に惹かれあっていくという展開の恋愛ドラマだが、正直これで2部構成の2時間半は正直ちとつらい。遠山と恵子の関係がいまひとつくっきり浮かび上がらなかったり、三角関係で依代の立場がいまひとつ曖昧だったりはするという弱点もある。おそらく、すべては最後の恵子がギターをひくシーンに繋げるための物語作りなのだろうが、そこから浮かび上がる物語性は希薄だ。
終盤、実は人気漫画家だった素絵と担当編集者である木戸(伊藤正之)のすれ違いの恋愛ドラマなどもあるのだが、遠山と恵子の関係についていえば、物語の輪郭がはっきりしないままクライマックスを迎えてしまう。大倉孝ニの激しい動きや、水野美紀の天然を思わせるコメディエンヌぶりが、舞台上にユーモラスな空気を送り込み、大いに盛りたててはいるのだけれど、やはり、8000円は、ちょっと高いかと。
ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕の脚本をG2が演出。劇中の曲に渡辺香津美を使ったのはセンスが良く、成功していると思う。

■データ
2006年7月19日ソワレ/渋谷パルコ劇場