(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

浪漫座別館/スターレス:J・Prog Summit 2005@恵比寿ギルティー

当初は、最近頭角をめきめきとあらわしてきてるFantasmagoriaも参加する予定だったというこの日のイベントだが、関西プログレ・シーンを代表する2バンドを同時に観られるだけでも、その充実度はかなりのもの。昨年の復活以来の快進撃が続く新生スターレスとページェントの血を継ぐ浪漫座別館のジョイント・ライブである。恵比寿のギルティーというライブハウスは初めてだが、ゆったりしたスペースと雰囲気で、まずまず悪くない会場だ。
この日は、実は浪漫座別館のレコ発ギグの予定だったのだが、諸般の事情で発売は年末に順延になってしまったらしい。ただし、スターレスが先に舞台に立ったのは、トリを譲ったのではなく、堀江のドラムセットゆえとのことで、なるほどステージ上のセットは短時間じゃセッティングなどできそうにないくらい賑々しい。
現在のスターレスは、ボーカリストでカウントするならば第四期にあたり、メタルバンドのSIEGFRIEDから荒木真偽をハントし、ジュラ在籍期に続き、二度目の黄金時代を迎えているといっていいだろう。リズム隊が磐石なのは言うまでもないが、真偽の自信に満ちたステージングと、ルーツは歌謡曲?と思わせるほどの印象的な歌メロでぐいぐい迫ってくるのは、この日も同じ。オープニングからアンコールまでのあっという間の1時間あまりを楽しませてもらったが、最大の収穫は、待望久しいアルバムの製作に入るというニュースが寿太郎御大の口から発せられたことだろう。その間しばらくライブがないのは寂しいが、早いところ新アルバムを届けてほしいものだ。
ところで、その際新曲もいいのだが、かつでMADE IN JAPANから出ていたライブ・アルバムに収録されていた曲を新録音でぜひ入れてもらいたい。〝Stage〟なんて、涙ものの名曲もありましたよねぇ。ぜひたのんます。あと、蛇足ながら、GWの神戸のライブでその片鱗をのぞかせた大久保率いる若き(?)ハードロックバンドのFIGA(森口亮vo&g、水谷祐一朗g、村中ろまん暁生dr、上村禎徳key)も現在音源を作っているようで、そちらの方もど〜んとライブをぶちかましてもらいたいもんだ。
さて、別館というややこしいネーミングの浪漫座別館は、かつてページェントを率いた中嶋一晃が現在やっているバンドで、本館の方がページェントのカバーバンド、こちらの別館がオリジナル曲をやるバンドという使い分けをしているらしい。過去に東京でのライブも敢行しているが、個人的にはページェント脱退後に中嶋が結成した夜来香というバンドが、いまひとつ耳に馴染まなかったことの後遺症から、浪漫座別館にも興味が湧かなかった。しかし、いよいよファーストアルバムがリリースされるというので、ちょっと観てみようかという気になったのだ。
駄菓子売り、中の島ガッツブラザースのコントと、いかにも中嶋好みの幕開きから、ライブは賑やかに始まった。ボーカルのひなの堂々たる歌いっぷりに目と耳を奪われているうちに、ステージはどんどん進んでいく。曲想は、フロマージュ、ページェント、夜来香と歩んできた中嶋一晃というアーティストのテイストというか好みのようなものを感じさせるものばかりだが、実はソングライティングはキーボードの北白川妙朗の力が大きいらしい。〝ホテル・パノラマ〟、〝恋する王様〟など、ひとつひとつの曲の完成度はかなり高いと見た。
それにしても、ひなというシンガーの存在感はなかなかのもので、軟硬両面を見せながらのステージの運びにはほれぼれした。中嶋一晃というのは、本当に女運、いや女性ボーカリスト運のいい人だ。またテラローザにいた浜田勝徳のベースも乗りがよく、全体を引き締めている。ところどころ息切れしていた座長中嶋だが、気持ちよさそうにハケット乗りでギターを弾いていたのも印象的。アンコールの〝セルロイドの空〟は、ページェント時代からのお約束だが、この日の演奏は、まざに円熟の境地を感じさせるような出来映えで、思わず涙が出そうになった。
後日手に入れた彼らのアルバム〝東方大ロマンス〟には、帯に〝「螺鈿幻想」から二十年〟とあった。もうそんなに経つのかという感慨とともに、その長いキャリアを経て、これだけのメンバー(前記のほかに、泉谷賢、中嶋秀行)に囲まれ、充実のライブを繰り広げることができる中嶋一晃のミュージシャン冥利のようなものを羨ましいと思った。