(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

Hatfield & the North @CLUB CITTA'川崎

長い間、ハットフィールド&ザ・ノースは、機会があればライブを聴きたいバンドのひとつだった。といっても、彼らの代表的なアルバム「ハットフィールド&ザ・ノース」、「ザ・ロッターズ・クラブ」がリリースされたのは、今から30年ほども前のことなので、当時はカンタベリー・サウンドへの興味が希薄だったこともあって、リアルタイムの彼らについての記憶は殆どない。ただ、印象的なジャケット・デザインは目に焼き付いていて、CD化が実現するとすぐに手に入れて、自在で親しみ易いサウンドにたちまち魅了された。
そういう意味では、わたしの中では彼らは古典という位置付けなのだけれど、バンド自体は再結成以来ライブもしっかり行っているようで、その音源も耳にしたことがある。演奏の内容は、かつての延長上にある演奏のように思えたものの、やはりライブとなると期待が一段と高まるのがファンってもんで、来日公演のチケットはいち早く手に入れてあった。
ライブは、予想通り穏やかな幕開け。最初の数曲は調子がいまひとつの感じもあったが、だんだんとエンジンがかかる。リチャード・シンクレア(b,v)、ピップ・パイル(d)、フィル・ミラー(g)、アレックス・マグワイア(kb)といった名うてのミュージシャンが揃っているだけあって、ソツのないインストが展開されていく。サウンド自体に派手さはないが、各プレイヤーの円熟したプレイは、耳を傾けていてたおやかで、とても心地よい。そうそう、これぞH&TNだ!
今回のライブで印象的だったのは、出番がまわってくると前面に出てくるキーボードで、ツアーに同道したアレックスはハットフィールド&ザ・ノースのファンだったそうだが、かなりのアピール度。キーボードが入っただけで、がらりと雰囲気が変わる演奏ぶりが面白かった。
もちろん、オリジナル・メンバーたちのプレイぶりも素晴らしく、リチャード・シンクレアにはいつになく余裕のようなものがあったし、歌声にも味があった。フィル・ミラーの自在なギターも、心地よい音色を奏でていた。ピップのドラムスが全体を引き締めていたのは当然のことだが、彼は隙さえあればすぐにカウントをして曲に入ろうとするのがおかしかった。他のメンバーは、聞こえてないフリをして、悠々とチューニングしたりしてたけどね。
全体で2時間半くらいの演奏が二部構成になっている。(休憩20分)出来は、後半の方が圧倒的によく、メンバーたちも気分が良さそうだった。わたしが観たのは初日だけれど、翌日の方がよかったかも。なお、この日の演奏は、ライブCDとしてリリースの予定があるそうだ。