(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

高円寺百景 4thアルバム発売記念ライブ @初台 The DOORS

初台DOORSのキャパシティは決して大きくはないけれど、オール・スタンディングなら200名は軽く収まるだろう。その会場が、ほぼ立錐の余地がなくなるくらいなのだから、彼らの人気のほどが伺えるというものだ。かくいうわたしも、ファーストアルバムの頃からの大ファンなのだが、生の彼らを観るのはこの日が初めて。早い整理番号で会場に入り、いいポジションに陣取り、開演をどきどきしながら待った。
開演予定時間の7時を25分ほど過ぎて、ようやく5人のメンバーがステージ上に登場し、おもむろに演奏が始まる。この日のメンバーは、吉田達也(Vo、Ds)、坂元健吾(Vo、Ba)、金澤美也子(Vo、Key)、山本響子(Vo)、小森慶子(Sax、cl)で、近日発売される予定となっている4thアルバムのレコーディング・メンバーらしい。それぞれ高円寺百景以外にも活躍の場をもっている。
先のライブDVDとは人数もメンバーが異なるようだが、次々に超絶アバンギャルドな難曲を決めていくメンバーたち。この日のライブは、のレコ初記念なのだけれど、2部構成の第1部は過去のアルバムの曲ばかりが取り上げられていく。
20分程度の休憩を挟んで、第2部はばりばりの新曲のオンパレード。(新アルバムから全曲を演奏)観客に耳への馴染みがない曲ばかりだが、曲のこなれ度からいって、新曲の方が今のバンドに馴染んでいる感じがした。変拍子と激しいまでのユニゾンの嵐は、逆に曲が類型化しがちなものだが、新曲はどれも独特の個性と工夫があって、緊張感は終盤に向けて高まっていき、それが最後の最後まで持続した。
わたしの位置からは、る*しろうでお馴染みの金澤美也子のせわしなく激しいピアノと山本響子がやけに落ち着きはらった態度で繰り広げるオペラチックなボーカルという対照的な二人が並んで観えたのが面白かった。今の高円寺百景には、欠かせないふたつの要素に思えた。渋さ知らズからの小森慶子は、やや遠慮があるか。もっと前面に出ていい場面があったかもしれない。

(セットリスト)
[前半] 1. QUIDOM 2. VISSQAUELL 3. BECTTEM POLT 4. AVEDUMMA 〜 RISSENDDO RRAIMB〜 GREMBO ZAVIA 5. NIVRAYM 6. ARAMIDDA HORVA  7. SUNNA ZARIOKI
[後半] 7. ANGHERR SHISSPA 8. QUIVEM VRASTORR 9. RATTIMS FRIEZZ 10. GRAHBEM JORGAZZ  11. FETTIM PAILLU 12. MIBINGVAHRE 13. TZIIDALL RASZHISST 14. WAMMILICA IFFIROM 15,(短い曲、タイトル不明)〜アンコール


幽霊や超能力という超自然の要素が前面に出ながら、プロットはあくまで謎解きを主調としたミステリがある。小説でいえば、ディーン・R・クーンツの「悪魔は夜はばたく」やジョン・ソールの「踊る女」などがそれで、映画の世界にもその例は少なくない。ちょうど、「13日の金曜日」の第1作が、(ちょっと出来は悪いが)フーダニット(誰が犯人か?の興味)のお話だったように。
ホラー映画の新ブランド、ダーク・キャッスルが製作、「アサシン」、「クリムゾン・リバー」のマチュー・カソヴィッツがメガホンをとった「ゴシカ」もそんな1本である。主人公の黒人女性ミランダ(ハル・ベリー)は、女性刑務所で働く犯罪心理学者である。上司であり、優しい夫でもあるグレイ医師(チャールズ・ダットン)との結婚生活も順調で、充実した日々を送っていた。その晩も、精神障害をかかえる殺人者のクロエ(ペネロペ・クルス)にてこずったものの、雨の中を自宅へと急いでいた。
通りかかった橋のたもとで、佇む少女を轢きそうになる。間一髪、ハンドルを切って避けたが、意識を失った彼女が次に目覚めたのは、自分の勤務先にある隔離室だった。事情が判らず、半狂乱になるミランダに、同僚のグラハム医師(ロバート・ダウニーJr)は、夫のグレイが自宅で惨殺死体となって発見され、死体の傍で血まみれの斧を持った彼女が発見されたと告げる。
よみがえってきた記憶は、橋の上で轢きそうになった少女との奇妙な接触だった。かすかに残る炎のイメージ。やがて、その少女が同僚の同僚の医師フィル(バーナード・ショー)の娘だったことが判る。しかし、彼女はすでに四年前に自殺していたのだ。かつての同僚たちや夫の友人だった警察官(ジョン・キャロル・リンチ)から犯人の扱いをされた彼女は、橋の上の少女にまつわる幾度となく不思議な現象に襲われる。クロエとの接触が、彼女に新たな扉を開けさせる。そして、腕に浮かび上がる〝ひとりではない〟のメッセージが、彼女を真相の解明へと駆り立てていく。
最新の技術を駆使した恐怖映像、患者であり、ある意味主人公を導いていく殺人者クロエの不気味な存在感といい、観ている途中、これは純然たるホラーではないのではという思いが、何度となく頭をよぎった。優秀な精神科医という役どころの割には、美しいが衝動的でヒステリックなヒロインも、物語前半はほとんど理性的なところがなく、ミステリとしての興味はほとんど潰えたかに見えた。
しかし、中盤、ミランダが病院を抜け出してからの展開は、炎の意味が判明したり、謎のメッセージの解釈をめぐって二転三転する展開があって、ミステリ映画としての面白さがようやく浮上する。この後半の理性的な展開を失速と感じるか、快感と思うかは、観る側の好みの問題で、わたしは、後者。露骨なミスリードにひっかかり、別の人物が真犯人に違いないと思っていた。
ただし、ペネロペ・クルス演じる殺人者のイメージは強烈なだけに、役の置き所が難しい。事件の本筋と絡んでいるように思わせる(というか、見えてしまう)のは、どう考えても、プロットの混乱ではないか。幕切れも面白いとは思うが、あれでは十中八九「シックス・センス」を思い浮かべてしまうよ。[★★]

(以下ネタばれ)
ミランダの夫殺しは、殺人者の犠牲となった少女の霊が彼女に乗り移って行ったものだった。グレイ医師は、少年時代から異常快楽殺人者で、少女を誘拐し、監禁しては殺していたのだった。
さらに、夫には親友であり警察官の共犯者がいた。〝ひとりではない〟は、殺人現場にミランダ以外の人物がいた、という意味でも、被害者はひとりだけではない、という意味でもなく、犯人が二人いるというメッセージだったのだ。