(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

世界でいちばん不運で幸せな私(2004)

人騒がせな男女の物語である。ヨーロッパ全土で大ヒットになったという触れ込みだが、正直いって、物語自体はまったく共感できない。しかし、それでいて不思議と気になる映画なのだ。
小学生のジュリアン(子役、のちにギョーム・カネ)は、移民の子として苛められてばかりの少女ソフィー(子役、のちにマリオン・コティヤール)を元気付けるために、メリーゴーランドの模様が入ったきれいな空缶を彼女に渡す。それを宝物として受け取ったソフィーは、ジュリアンにこう言う。「ゲームをやって勝ったら返してあげるわ。のる?のらない?」 しかし、この一言が彼らの人生を決定付けるものになるとは、幼いふたりは知るよしもなかった。この宝物は、ふたりの間をテニスのラリーのように行ったり来たり。そのたびに、人生のあらゆる局面を、ふたりはゲームに変えていく。互いに惹かれあうものの、ふたりを運命の悪戯に誘うゲームは果てしなく続いていく。そして、このゲームの果てに、ふたりを待ち受けていたものは…。
わが国でも大ヒットした『アメリ』にも通じる個性的な映像スタイルが印象に残るけれど、その個性的な映画作法作法にも拘わらず、どうもピンと来ない。度を過ごしたジョークよろしく、あまりにくどいふたりの暴走ぶりに、観ていて次第に腹がたってくる。
しかし、一方で、エスカレートしていくゲームに、次にどういう展開が待ち受けるのかという興味が湧いてくるのも事実で、そこはミステリの楽しみに似ているといえるかもしれない。わたしは、ちょっとした伏線が鮮やかに浮かび上がってエンディングが気に入った。結末はしょうもないほどお馬鹿だが、この幕切れの余韻はちょっと素敵だ。監督は、この作品が長編映画デビューとなるヤン・サミュエル。[★★]

世界でいちばん不運で幸せな私 [DVD]

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