(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

カルメン・マキ&サラマンドラ@渋谷クラブ・クアトロ

カルメン・マキ&サラマンドラは、プログレである。いや、ほんと。マキOZ時代の音もプログレ・ファンには人気があるんだけど(〝私は風〟とかね)、現在のサラマンドラは凄いよ。鬼怒無月の切れ良く刻むギターと、勝井祐二の天空を舞うエレクトリック・ヴァイオリン。そんなゴージャスな演奏をバックに、マキさんの歌が聴けるのだから、プログレ・ファンにとって、これ以上の贅沢はない。
サラマンドラのエラいところは、パーマネント・バンドとしてきちんと年に3〜4回のライブをこなしていることだ。わたしは昨年、横浜野毛のドルフィーという30人も入ったらいっぱいになってしまうような場末の小さなライブハウスで彼らを観て以来のことだけれど、その後もコンスタンスにライブで演奏している。マキさんのMCによれば、今年はお寺でも演奏したとか。とにかく、バンドとしての姿勢は、非常に積極的だ。
今回は、渋谷のクアトロというやや広い会場ということもあって、ゆったりとマキさんが観れるのが楽しみだった。なにせ、横浜のドルフィーは、バーカウンターの前ですれ違ったマキさんに、足を踏まれるくらいの狭さだったので。この日のクアトロはというと、開場時はスカスカだったので、嬉しいような心配なような気分におそわれたが、対バンのさかなの演奏が終わるころには、かなり混み合ってきて、雰囲気も盛り上がってきた。そしていよいよ演奏がスタート。
オープニングは、CDでも1曲目に入っていた「Trick Star」。マキさんの声は、もうこの最初の曲から全開で、歌が始まった途端にその場の空気が一変するのがわかる。バンド内のコンセントレーションもいい感じで、曲を追うごとにいい意味での緊張感がメンバーの間で高まっていく。
前半は、新曲2曲と今年でたアコースティック・アルバム〝another way〟からの曲を、サラマンドラ風にアレンジした曲2曲で、お馴染みの〝かもめ〟(これもそのアルバムに入ってる)を挟んで、後半戦へ突入。ライブの定番ともいうべき〝変らないもの〟と〝空と陸の交わったところ〟で演奏はクライマックスを迎える。そして、アンコールはマキさんいうところの「ちょっとヘンな〝オーバー・ザ・レインボウ〟」で、拍手が鳴り止まない中、幕となった。
今回のライブの収穫は、2曲披露された新曲で、とくに〝Nord〟という曲は、インスト部分も充実したいかにもサラマンドラに相応しい秀曲。気の早いファンとしては2ndアルバムへの期待が勝手に膨らんでいく。とはいえ、まだまだ時間がかかると思うが、ライブ活動を重視する彼らが、その過程でそれらの新曲をどう磨き上げていくかが興味深い。