(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝SHIROH〟SHINKANSEN☆RX@帝国劇場)

さて、帝国劇場の新感線である。しかも、初日である。
タイトルの『SHIROH』は、天草四郎のシローであり、題材は島原の乱。とくれば、新感線、というか座付の中島かずきお得意の時代劇である。帝劇で、チケットも1万円を越えるということで、少々心配も先にたった公演ではあったが、それは見事杞憂に終わったようだ。いやぁ、実に素晴らしい。最近、これほど興奮した舞台も珍しい。
この芝居(ミュージカル)の成功は、ひとえに中川晃教というヒーロー役の天使にたとえるべき美しき歌声に負っていると断言する。ただし、その成功をさらに磐石のものとしているのは、松平伊豆守信綱という強烈な悪役にもスポットを当てたことであり、さらにそれを見事に演じきった江守徹の名演にほかならない。(ただし、歌は下手だったが)
中川という役者は初見だが、とにかく歌が素晴らしい。友人によると、「MOZART!」(2002年日生劇場)でも抜群の歌声で観客を沸かせたそうだが、この大役はこの歌声の持ち主でなければ演じ切れなかったに違いないと思わせるほどの歌いっぷりだ。対する江守のアクの強さも、地の役柄なのだろうが、迫力に満ちている。個人的には、伊豆守の密偵役、伊賀のくの一お蜜を演じた秋山菜津子の女の強さと弱さをきびきびと演じる姿にも心を奪われた。脇を固める小劇場出身の高田聖子、池田成志橋本じゅんらも好演だったが、3人の芝居っぷりはそれらを遥かに圧倒していた。
また、中川の声質とぴったりなじむ岡崎司の楽曲も良かった。幕が降りてからも、まだ中川の歌を聴いていたい気分に囚われた観客も多かったに違いない。かくいうわたしも、勿論、そのひとりだった。帝劇という大舞台で、大仕掛けのミュージカルをたっぷりと堪能した一夜でした。
■データ
初日ソワレ/帝国劇場