(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「WALTZ MACBETH」東京デスロック unlock#last / REBIRTH#1

東京デスロックもまた第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルの二次審査を通過した団体のひとつ。斬新すぎるくらい斬新な「マクベス」を坪内遼遥訳のテキストで。これまでのunlockシリーズの総括と、新しくスタートするREBIRTHシリーズへの橋渡しを兼ねるという意図もあるようで。
柔道やレスリングの競技場を思わせる四角い舞台。その四方向を囲むように二列づつ観客席が並んでいる。一段高い舞台に、八人の役者たちがそれぞれ椅子を持って登場。しかし、椅子は人数には1脚足りない。かくして、奇妙な椅子取りゲームが始まる。雄弁なる無言で、物言いたげな目線を交わす役者たち。しかし、科白はないまま椅子取りの駆け引きが続いていく。やがて、羽場睦子の「きれいはきたない、きたないはきれい」を合図に科白のやりとりがようやく始まり、「マクベス」の物語が語られていく。
本公演に先立つ4月29日に同劇場の3階稽古場で行われたプレビュー&プロセス公開にお邪魔しているわたしは、そのときの模様でおおよそのスタイルを経験済みだったのでさほどの衝撃はなかったが、当日初めての観客は驚いたろう。マクベス夫妻の欲望を椅子取りゲームに置き換えるというのは、アイデアとして非常に斬新。
ひたすら廻り続ける椅子取りゲームは、2年前の「再生」にも繋がっていて、椅子取りに没頭する役者たちは、Perfumeの「Game」に合わせて汗を流し、疲弊し、やがて血を吐きながら舞台上に倒れていく。疲労の果てに、どこか一線を越えてしまったような役者たちは、憑かれたように演じ、それぞれの表現方法で登場人物たちの心情を掘り下げていく。
新たなREBIRTHシリーズは、前シリーズの延長上にあるもののようだが、そこには役者の存在だけではなく、戯曲の姿が立ち上がることを目指していると思しい。シェイクスピアの古典をとりあげた理由も、そのあたりにあるのだろうか。
ただ今回は、芝居の成り立ちに理屈っぽさが感じられ、やや鼻についた。頭で考えすぎた結果が、やや形式に流れているようにも思えた。事前にプレビューを観てしまったせいもあるのかもしれない。斬新さにも、飽きが来やすいという弱点があるのかもしれないとふと思い当たった。(90分)

■データ
プレビューで観たワルツを踊るバージョンも捨てがたかったなと思い出したソワレ/吉祥寺シアター
5・9〜5・11
原作/ウィリアム・シェイクスピア  翻訳/坪内遼遥  構成・演出/多田淳之介
出演/夏目慎也、佐山和泉、永井秀樹、石橋亜希子(青年団)、山本雅幸佐藤誠、寺内亜矢子、羽場睦子